時計メンテナンスで最も大切なオーバーホールは、その時計メーカーを筆頭に選択肢が用意されているのが現状です。なので、時計オーバーホールの依頼先として最も推奨されるのがメーカーカスタマーサービスではないでしょうか。
しかし最近は、このメーカーカスタマーサービスの優位性が薄れ、またメンテナンス格差を設けた「並行差別」を行う時計メーカーも少なくありません。
こちらのページでは、そんなメーカーカスタマーサービスの運営方法や価格に疑問を感じる方に向けて、メーカー以外の選択肢である時計修理専門店選び3つの基準についてご紹介しています。
時計修理店選びの3箇条
技術的な担保があるか
優秀な時計修理専門店では豊富な経験と実績の証明として、様々な修理事例の紹介を行なっています。また、そういった事例紹介を行わない時計修理店や、新品の時計写真をイメージ画像として使っているだけの実績に乏しい時計修理店は避けることが無難です。
時計修理専門店にはそれぞれに得意のメーカーや、モデルといったものが存在している場合がほとんどです。多くの優秀な時計修理専門店にはメーカー出身技術者の在籍が少なくありませんが、そういったことも影響しているのかもしれません。
時計のオーバーホールはムーブメント内の部品全てを分解・洗浄・組み立て・注油を行いますが、このムーブメントは時計メーカー毎に必ずしも違いがある訳ではありません。時計ムーブメントには、自社ムーブメントと汎用ムーブメントが存在しています。
自社ムーブメントの代表格となるのがロレックスですが、ロレックス以外の多くの時計メーカーがこれまでとこれからを含めて、汎用ムーブメントを仕入れた時計作りが行われています。
実は、機械式時計ムーブメントで最も流通しているのが、この汎用ムーブメントです。その代表となるのがETA社のムーブメントです。次に多い汎用ムーブメントがETA社の代替用ムーブメントを製造しているセリタ社です。この2つのムーブメントを搭載した時計が機械式時計市場の多くを占めているのが現状です。
なので、最も流通量が多いこの2つのムーブメントが使用された時計のオーバーホールは、優秀な時計修理専門店同士では技術的な大きな違いとはなりません。この2つのムーブメントの作りや仕様を熟知してる技術者がほとんどだからです。
また同様に、汎用ムーブメント搭載モデルの次に多い、ロレックスについても同様のことが言えるかもしれません。とはいえ、時計修理専門店は得意のブランドやモデルを告知している場合がほとんどですので、そういったことも参考にして選んでみることをおすすめします。
純正部品の入手ルートを確立しているか
時計オーバーホールでは時と場合によって、部品交換が発生する場合も少なくありません。メーカーであれば指定のパーツは一律での交換が当たり前に行われます。一方の時計修理専門店はパーツの消耗を抑えた対応を行い、メーカーのような必要のないパーツ交換が行われることはありません。
しかし、オーバーホール間隔が長い個体や、そもそもオーバーホールを行なっていなかった個体であれば、部品交換の発生は防ぎようがありません。そういった場合にはそのメーカーの純正部品が使われることになります。
ここで問題となってくるのが、その時計のムーブメントということになります。汎用ムーブメントであれば流通量も多く簡単に入手できる場合がほとんどです。しかし、自社ムーブメントを搭載したモデルはそう簡単ではありません。
優秀な時計修理専門店とそうでない時計修理店の違いがココに発生します。たとえば、国内では入手が困難な部品を海外ルートを通じて入手する優秀な時計修理専門店も少なくありません。また、その他様々なルートを通じた部品入手が行われています。
最近で言えばオメガのコーアクシャルモデルが良い例です。このコーアクシャルモデルの部品入手は簡単ではありません。お断りする時計修理店があれば問題なく受け付ける時計修理店もありますので、そういったことも時計修理専門店選びの判断材料の1つとなるでしょう。
* ブライトリングやタグホイヤーなどの自社ムーブメントを搭載した一部のモデルに関しては、一切の流通を行なっていない現状からメーカー対応一択とはなってしまいます。
価格に優位性はあるか
時計修理専門店の最大のアドバンテージは、メーカーカスタマーサービスに比べたその価格にあります。メーカーやモデルによってはメーカー比50%OFF以上となる場合が少なくありません。
また、時計修理専門店のオーバーホール価格の相場を把握してみることをおすすめします。調べてみればわかりますが、時計修理専門店同士ではその基本価格に大きな違いはありません。それは、多くの時計修理専門店がメーカーカスタマーサービスの価格を基準としているからです。
しかし、部品交換を含めた実際のオーバーホール価格には違いがあったりもします。それぞれの時計修理専門店の交換部品の判断に違いがあったり、部品代の違いもあるかもしれません。しかしそれは見積もりを行わないと判断することが出来ません。
ほとんどの時計修理専門店では見積もりを無料対応していますので、気になる時計修理店があれば一度「無料見積もり」を利用してみるのも1つの方法かもしれません。