最終更新日:2022.6.1
機械式時計は定期的なメンテナンスを行う事で、いつまでもコンディション良く同じ時を過ごすことが可能です。とはいっても、定期的なメンテナンスが難しかったり、または突然のトラブルや不具合といったこともあるでしょう。
こちらでは、そんな機械式時計の突然のトラブルや不具合でも慌てる事なく対処していただけるように、機械式時計の良くあるトラブルの原因と、その際に予想される修理費用をまとめてみました。
目次
機械式時計のトラブルの原因と予想される修理費用
機械式時計のムーブメント内には一般的な3針時計で100個以上、クロノグラフモデルであれば200個以上の部品が使われています。これらの部品には注油がなされ、それぞれがスムーズに稼働することで時計の精度が保たれています。
しかし、スムーズな稼働が妨げられて部品同士の摩擦によって、様々なトラブルや不具合といったことが引き起こされます。また、外部からの衝撃等によってもトラブルや不具合を招くでしょう。主な時計のトラブルや不具合の症状と原因と解決。また、その際に予想される部品交換時の費用は次の通りです。
時計が止まる
● ゼンマイ劣化(ゼンマイ交換)
● ゼンマイ切れ(ゼンマイ交換)
● ローター真摩耗(ローター芯交換)
● リバーシング摩耗(リバーシングホイール交換)
機械式時計はゼンマイを巻き上げ、ゼンマイが解ける力を利用して歯車を回転させ針を動かしています。当然ですが、このゼンマイが劣化したり切れたりしていれば時計は止まってしまいます。
自動巻機構のローターのスムーズな回転を支えるローター芯の摩耗は、ローターの回転にガタつきが生じて正常なゼンマイの巻き上げに影響を及ぼします。また、ローターの回転をゼンマイの巻き上げに変換するリバーシングホイールの摩耗も、ゼンマイの巻き上げに大きく影響します。
これらのトラブルの解決にはオーバーホールを行って、それぞれに対象部品の交換が必要になります。その予想される交換部品の費用は次の通りです。これらの交換部品代がオーバーホール価格にプラスされます。
● ゼンマイ交換・・・・・5,000円〜
● ローター芯交換・・・・10,000円〜
● リバーシング交換・・・7,000円〜
時計が遅れる
● 潤滑油の劣化(オーバーホール)
● 潤滑油切れ(オーバーホール)
● ゼンマイ劣化(ゼンマイ交換)
● 切替車摩耗(切替車交換)
時計の遅れのトラブルのほとんどは、ムーブメント内の油の劣化と油切れが原因です。なので、ほとんどの場合はオーバーホールを行う事で解決するでしょう。しかし油切れの状態で使用し続けることで、部品の劣化を招いていることも少なくありません。
時計が遅れる場合の交換部品として、ゼンマイと切替車の交換が一般的なようです。ゼンマイの劣化は時計の遅れに繋がりますが、自動巻機構の部品の1つとなる切替車は、ゼンマイ巻き上げの回転方向を切る替える重要部品となるために、この切替車の劣化はゼンマイ巻き上げ不良となって遅れの原因です。
これらのトラブルの解決にはオーバーホールを行って、それぞれに対象部品の交換が必要になります。その予想される交換部品の費用は次の通りです。これらの交換部品代がオーバーホール価格にプラスされます。
● ゼンマイ交換・・・・・5,000円〜
● 切替車交換・・・・・・4,000円〜
時計が極端に進む
● ヒゲゼンマイの絡み(修正)
時計が極端に進む原因はぶつけたや落としたなどの時計の外部からの衝撃が加わって、時計が正確な時を刻むテンプを構成するヒゲゼンマイが絡みつくことによって起こる場合がほとんどです。
このヒゲゼンマイの絡みを修正することで、極端な進みの原因は解決するでしょう。この場合もオーバーホールにプラスして修正費用が発生します。その費用は次の通りです。
● ヒゲゼンマイ修正・・・・3,000円〜
時間調整の不具合
● ツヅミ車のカケ(ツツミ車交換)
● 小鉄車のカケ(小鉄車交換)
針の操作をするためのツヅミ車、小鉄車に不良があれば針の操作はままなりません。小鉄車は小さい穴の開いた歯車のため負担がかかり歯車が割れやすく、ツヅミ車も人間の操作の力が小さな歯に加わるので歯が欠けること多いようです。
時間調整の不具合は、この部分の不良のケースが多く見られます。時間調節の不具合もオーバーホールを行って、それぞれに対象部品の交換が必要になります。その予想される交換部品の費用は次の通りです。これらの交換部品代がオーバーホール価格にプラスされます。
● ツヅミ車交換・・・・8,000円〜
● 小鉄車交換・・・・・7,000円〜
リューズの不良
● 湿気の混入(オーバーホール)
● ねじ込み不良(リューズ一式交換)
リューズのトラブルの原因のほとんどが湿気の混入です。ネジ山が摩耗してリューズのねじ込み不良を招くようです。また、湿気の混入に伴ってサビの発生も少なくないようです。そのような場合はリューズ一式交換が行われます。
リューズ不良もオーバーホールを行って、それぞれに対象部品の交換が必要になります。その予想される交換部品の費用は次の通りです。これらの交換部品代がオーバーホール価格にプラスされます。
● リューズ交換・・・・・10,000円〜
● チューブ交換・・・・・5,000円〜
● マキシン交換・・・・・3,000円〜
クロノグラフのリセット不良
● 外部からの衝撃(部品交換)
● 湿気の混入(オーバーホール)
クロノグラフモデルのリセット不良は、プッシュボタンの破損や劣化によって引き起こされる場合がほとんどです。 そういった場合にはプッシュボタン交換対応となります。なので、オーバーホールとプッシュボタン交換が必要です。その予想される交換部品の費用は次の通りです。交換部品代がオーバーホール価格にプラスされます。
● プッシュボタン交換・・・・4,000円〜
まとめ:トラブルのほとんどが定期的なオーバーホールで防げる
機械式時計によく見られるトラブルや不具合の原因のほとんどは、定期的なオーバーホールを実施することで防ぐことが可能です。とはいえ、わかってはいても時計のオーバーホールは「出来るだけ先延ばしにしたい」というのが本音かもしれません。
しかし、先延ばしにすればするほど時計には負荷がかかるし、後々の修理も大掛かりなものになってしまい費用も高額になってしまうことが少なくありません。そうならないためにも「止まる」「動かない」といったトラブルの前に定期的なメンテナンスを実施するのが理想的です。
なので、時計のコンディションを最良な状態に保つ定期的なオーバーホールの実施のためにも、その時計メーカーだけにたよるのではなく、優秀な時計修理専門店を見極めてコストカットを図ることも重要です。
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