最終更新日:2022.9.13
機械式時計や高級クオーツ時計などは、その時計を購入して終わりという訳にはいきません。機械式時計であれば数年で止まったりすることもあるかもしれません。またクオーツ時計であれば電池切れ等で、やはり同じく止まったりすることになるでしょう。
買い替えが容易な安価な時計であれば、その都度交換でも問題はないでしょう。しかし、高級時計と呼ばれる機械式時計等においては、その趣味性が高いこともあって高価なモデルが多く、また一生モノと呼ばれるモデルが多く存在するのも大きな魅力の一つとなっています。
そのためには、どうしても購入後のメンテナンスが必要となってきます。この時計メンテナンスにおける「正規品」と「並行品」との間で、しばしば問題となるのが「並行差別」と呼ばれるメンテナンス価格の違いがあります。
目次
並行差別を行う時計ブランド
時計ブランドによっては、時計修理・オーバーホールの対応を「正規」と「並行」とで差別化をしているブランドが存在しています。この場合の「並行差別」は、その時計メーカーでのメンテナンスの価格に違いがあります。
例えば、「正規品」の時計は割引が行われたり、または「並行品」は「正規品」に対して割り増し価格の提示を行ったり、さらには「並行品」のメーカー対応を行わない時計メーカーまで存在しています。それでは「並行差別」を行う代表的な時計ブランドをご紹介していきます。
タグホイヤー(LVMHグループ)
● 正規品は部品代20%OFF
● 正規品オーバーホール価格 42,120円〜75,600円
● 並行品オーバーホール価格 63,180円〜113,400円【1,5倍】
タグホイヤーの正規店で購入すると入会する事の出来る「エドワードクラブ」会員は特典を受けることが出来ますが、タグホイヤーの腕時計を並行輸入品や中古購入した場合は「エドワードクラブ」に入会することができません。
タグホイヤーでは「エドワードクラブ」カードの提示によって「正規品」ユーザーの判断を行います。尚、「並行品」をメーカーでオーバーホールする場合は1,5倍の価格を提示されます。
ゼニス(LVMHグループ)
● 正規品オーバーホール価格 43,000円〜65,000円
● 並行品オーバーホール価格 64,500円〜97,500円【1,5倍】
ゼニスはタグ・ホイヤー同様にLVMHウォッチ・ジュエリージャパン傘下の時計ブランドとなります。なので、タグ・ホイヤー同様に「並行品」のメンテナンスには正規価格の1,5倍の提示が行われます。
オリス
● 正規品オーバーホール価格 25,000円〜40,000円
● 並行品オーバーホール価格 45,000円〜72,000円【1,8倍】
オリスは独立系ですが以前より独自の並行差別を行なっていました。現在のオリスは1,8倍の格差を設けるブランドとなっています。尚、2014年より自社ムーブメント搭載モデルの販売を行なっていますが、手巻きモデルの自社ムーブメントはスイス本国見積もりとなっています。
ブライトリング(CVCキャピタル・パートナーズ)
● 正規品オーバーホール価格 40,000円〜62,500円
● 並行品オーバーホール価格 80,000円〜125,000円【2倍】
ブライトリングの正規店で購入すると入会出来る「クラブ・ブライトリング」会員であれば各種特典を受けることが出来ます。ブライトリングの腕時計を並行輸入品や中古購入した場合は「クラブ・ブライトリング」に入会できません。
「クラブ・ブライトリング」会員ではない「並行品」をメーカーでオーバーホール・修理を依頼すると2倍の価格を提示されます。
Sinn(ジン)
● 正規品オーバーホール価格(自動巻)29,700円〜
● 並行品オーバーホール価格(自動巻)59,400円〜【2倍】
Sinn(ジン)の国内総代理店は株式会社ホッタとなり、正規オーバーホールも株式会社ホッタのメンテナンス部門が行います。国内の正規代理店での購入時に添付される保証書の提示がない場合は、基本価格の2倍の料金が見積もられます。
尚、ダイバーズ系のハイドロシステム採用の時計はドイツ本国見積もりとなります。
フランクミューラー(フランクミュラーウォッチランド)
● 正規品オーバーホール価格 79,000円〜105,000円
● 並行品オーバーホール価格 メーカー対応不可能
「並行品」の割り増し価格が可愛く見えてしまうほど、このフランクミューラーは強烈です。「並行品」のメーカーメンテナンスは、そもそも受付を行っていません。なので、「並行品」のメーカー依頼は諦めましょう。
並行差別を行わない時計ブランド
● ロレックス
● チューダー
● IWC
● オメガ
● ロンジン
● ティソ
● ハミルトン
● パネライ
● カルティエ
● ビアジェ
● モンブラン
● ジャガー・ルクルト
多くの時計ブランドが時計グループに所属していますが、オメガやロンジン等が所属する「スウォッチグループ」、IWCやカルティエ等が所属する「リシュモングループ」には並行差別はありません。
また、これらのグループには所属していない独立系のロレックスやチューダーでも並行差別はありません。尚、独立系でもオリスのように独自に並行差別を設けている時計ブランドもありますので注意が必要です。
これらの「並行差別」を行わない時計ブランドの特徴として、「正規品」と「並行品」の販売価格に大きな格差があります。ブランドによっては「正規品」の半額以下で購入できる「並行品」が少なくありません。
逆に、ロレックスのように「正規品」の供給が少ないことから「並行品」価格が爆上がりする特異な現象もあるようですので、ロレックス以外のブランドではお得な「並行品」を購入して、購入後のメンテナンスはメーカー依頼を行うユーザーが多いようです。
上手な「並行差別」との付き合い方!
● 優秀な時計修理専門店を利用する
● 定期オーバーホールを心掛ける
● メーカー利用は最小限に抑える
「並行差別」との上手な付き合い方は、ズバリ「メーカー」とは最小限の付き合い方をするということです。そのためには、その時計に熟知した時計技師在籍の優秀な時計修理専門店を見極める必要もあるでしょう。
同時に、定期的なオーバーホールを行うことで部品の消耗を軽減することが重要となるでしょう。そのためにも、リーズナブルで優秀な時計修理専門店を利用することが最良の方法となるでしょう。
時計の「並行差別」は、並行品を購入したユーザーにとって不利益となるものです。とはいっても「ロレックス」をはじめとする多くの時計ユーザーが「並行輸入店」からの購入が多いのが現状です。
また、「並行差別」の存在を理解している方であっても「並行輸入店」からの購入が多いのは、「正規品」との大きな価格差があるのも確かです。
まとめ:「正規品」「並行品」どちらのメリットを優先するか!
今回は、時計メンテナンス時に問題となる「並行差別」についてお伝えしてみましたが参考になったでしょうか。この「並行差別」は、その時計メーカーによって様々です。ですが、多くの時計メーカーでは「並行差別」の存在はありません。
しかしながら、一部の時計メーカーではそのメーカーでの時計メンテナンス時における「並行差別」を設けている時計ブランドがあります。とはいえ、日本国内においては時計を売るための広告宣伝を行い、小売店や百貨店の販売ルートを探すといった営業活動のコストが必要です。
そういったことからも、国内での正規オーバーホールで「並行差別」を設ける時計ブランドがあることも仕方のない事なのかもしれません。
「並行差別」の元となる「正規品」「並行品」には、それぞれのメリットやデメリットが存在します。そこには、その時計を購入される方それぞれの考え方による部分が多いものではないかと思います。
なので、「正規品」「並行品」との上手な付き合い方としては、どちらのメリットを優先するのかということではないかと思います。
この記事へのコメントはありません。