ここ日本においてのスイスメイドの高級時計といわれる時計の購入方法には「正規代理店」と「並行輸入店」の2つの時計売り場やショップが存在しています。この、2つの時計の購入場所の違いだけでそれぞれ「正規品」「並行品」とのすみわけが行われるのが一般的ではないかと思います。

モータースポーツをインスパイヤしたモデルや、他のスイスメイドにはないデザイン性が特徴の時計ブランド「タグ・ホイヤー」は、この「正規品」と「並行品」とで差別化を図る時計メーカーとしても有名です。

その代表的な差別化のシンボルとなっているのが「エドワードクラブ」の存在です。今回は、タグ・ホイヤー正規ユーザーのみが入会可能な「エドワードクラブ」のその背景や、修理・オーバーホールなどのメンテナンス差別化の関係についてお伝えしてみようと思います。

「エドワードクラブ」の誕生は自社ムーブメントと関係している!?

タグ・ホイヤーといえば、モータースポーツとの結びつきを強く感じるモデルが少なくありません。なかでも「カレラ」は、タグ・ホイヤーを代表するモデルだと誰もが認識されているのではないでしょうか。

この「カレラ」2010年モデルからタグ・ホイヤー創立150周年を記念するモデルとして、タグ・ホイヤー初の自社開発ムーブメント「キャリパー1887」が搭載されました。そして、タグ・ホイヤー「正規品」に与えられる「エドワードクラブ」は2012年に誕生しています。

このようにタグ・ホイヤー自社開発ムーブメントの搭載開始から間もなく「エドワードクラブ」が新設され、「正規品」と「並行品」との差別化を図るようになったのは周知の事実のようです。その背景には、自社開発ムーブメント「キャリパー1887」の部品をタグ・ホイヤーが流通させていないことにも関係があるようです。

また、タグ・ホイヤーは多くのクオーツモデルが開発・販売されていますが「キャリパー1887」同様に、クオーツキャリパー「キャリパーS」もタグ・ホイヤー独自クオーツムーブメントということで、その部品の流通を行っていません。

そしてタグ・ホイヤーは、ウブロ、ブルガリ、ゼニス同様にLVMHウォッチ・ジュエリージャパン傘下の時計ブランドとなっています。このLVMHウォッチ・ジュエリージャパンは「正規品」と「並行品」との間に差別化をはかることでも有名ですので、タグ・ホイヤーにとってはそういった影響も大きいのかもしれません。

タグ・ホイヤーのすべてのモデルが自社ムーブメントか?

自社ムーブメント「キャリパー1887」の誕生以前のタグ・ホイヤーは、スイス製ETA社のムーブメントを使用していました。そして、現在でもETA社のムーブメントを仕入れて「キャリパー5」としていたり、ETA社のキャリパー「7750」をベースに作られた「キャリバー16」、さらには同じLVMHウォッチ・ジュエリージャパン傘下のゼニスのキャリパーを搭載した「キャリバー36」などがラインナップされています。

このように、タグ・ホイヤーのラインナップには自社製ムーブメントと、多くのスイス製の時計に広く使われ耐久性と信頼性が高いETA社やセリタ社のムーブメント、さらにはゼニスのキャリパーなどそのムーブメントも多岐に渡るのもタグ・ホイヤーの特徴の1つなのかもしれません。

タグ・ホイヤー自社ムーブメント「1887」はセイコー製?

タグ・ホイヤーのブランドイメージをリードする「カレラ」に搭載されているタグ・ホイヤー初の自社開発ムーブメント「1887」には、日本のセイコー製6Sクロノグラフムーブメントが使われています。

このセイコー製6Sクロノグラフムーブメントをタグ・ホイヤー採用した理由としては、現在流通しているクロノグラフの中で量産に向き、薄く丈夫で、鑑賞にも耐えうる機械ということで「6Sムーブメント使用権利」を購入して、タグ・ホイヤーが独自のカスタマイズを行って搭載されているようです。

厳密にいえば「キャリパー1887」はセイコー製のムーブメントをそのまま積んでいるわけではありません。タグホ・イヤーが自社製・スイス製とするためには、そのパーツの6割を入れ替える必要があります。

とはいえ「キャリパー1887」のベースとなっているのはネジ一本まで、その位置が一緒となっているように、セイコー製6Sクロノグラフムーブメントが使われているということには違いはありません。

タグ・ホイヤーの「正規品」と「並行品」の価格差は4~5割

タグ・ホイヤーは「正規品」と「並行品」とで差別化を図っている時計ブランドですが、この「正規品」と「並行品」の最も大きな違いは、その購入価格にあるのは確かです。タグ・ホイヤーユーザーの多くが「並行品」を扱う「並行輸入店」を利用するのはそこに理由があります。

タグ・ホイヤーの正規代理店では、ほとんど値引きは期待できません。そこで、少しでもお安くタグ・ホイヤーを購入しようとした場合には「並行輸入店」からの購入を選択するタグ・ホイヤーユーザー多いのはそのためです。

では、この「正規品」と「並行品」との間には、どのくらいの価格差があるのでしょうか?実は、このタグ・ホイヤーは日本国内に限って言えば、最もその価格差が大きい時計ブランドとなっています。

タグ・ホイヤーの多くは、日本国内で購入できるモデルであれば「正規代理店」と「並行輸入店」との販売価格には4~5割の開きがあります。なので、タグ・ホイヤー「正規品」の4~5割引きで「並行品」が購入できてしまうということです。

例えば、カレラ 100M キャリバー16 デイデイト クロノグラフ を購入しようとすると・・・

  • 正規品・・・545,400円
  • 並行品・・・301,000円(相場価格)

タグ・ホイヤーユーザーの多くがその購入を検討する「カレラ」では、244,000程度の価格差が発生しています。また、他のモデルも同様に正規品の4割引き、さらに店舗によっては5割引きでの購入も可能なものばかりです。

このような価格差は、あのロレックスではあまり見かけることがありません。むしろロレックスでは「並行品」が「正規品」よりも高価なモデルが存在するほどで、タグ・ホイヤーのような価格差は生まれてはいません。

このような状況からタグ・ホイヤーは、保証期間やメンテンスで差別化を図らないと、国内の正規品が売れなくなってしまうという事情があるのもうなずけてしまいます。

まとめ:「エドワードクラブ」の必要性は、その時計とどう付き合っていくか。

今回は「エドワードクラブ」の背景やタグ・ホイヤーの差別化について、お伝えしてみましたが参考になったでしょうか。タグ・ホイヤーはモータースポーツをはじめとした多くのスポーツをインスパイヤしたモデルが多く、またそのデザイン性も大きな魅力を持った時計ブランドではないかと思います。

タグ・ホイヤー正規品のみに与えられる「エドワードクラブ」入会資格は、多くのメリットがある反面、その購入価格に大きな開きがあることから、タグ・ホイヤーユーザーにとっては悩ましいところではないかと思います。

ですが一方で、その時計と一生を共にするのか?もしくは購入価格差を考慮して納得するか?または、いずれは手放すことを考慮するのか?などによっても、その「正規品」と「並行品」との向き合い方も変わってくるのではと思います。