最終更新日:2022.6.21
時計修理の千年堂はオーバーホール専門の時計修理専門店です。しかし、オーバーホールのみだけを行なっている訳ではありません。時計の故障はムーブメント内だけとは限りません。
こちらのページでは、時計修理の千年堂の年間修理実績30,000本以上の経験の中から、ベルトのバックルやリューズといった時計の外装品の故障事例とその対応や対策についてまとめています、
目次
【時計修理の千年堂】よくある故障事例
時計修理の千年堂ではオーバーホールと共に様々な故障修理にも対応してきました。そんな故障修理の中から外装パーツを中心とした修理事例を、その対応と対策を合わせてご紹介します。
【サブマリーナ】フラッシュフィットの不具合
フラッシュフィットはロレックスでの呼び名ですが、このフラッシュフィットの不具合はサブマリーナに良く見られる症状です。フラッシュフィットの内部にはケース本体とベルトをつなぎ止めるバネ棒が入っていますが、長年の使用と可動が激しい部分でもあることから引き起こされるトラブルです。
フラッシュフィットのこのような不具合は、バネ棒が変形している場合が多いようですので、修正と同時にバネ棒の交換が行われます。しかし、時計修理の千年堂ではオーバーホール時のサービス作業となりますので、費用の請求は行われないようです。
【タグホイヤー】クラスプ破損
クラスプは腕の脱着の際に負荷がかかりやすい部分である為に破損してしまうことがあります。タグホイヤーのこの手のブレスはその傾向も強いようです。
理想的な修理はクラスプ一式交換ですが、ベルト・バックルはメーカーに関係なく入手が困難です。ベルト・バックルの純正部品の社外への流通がないために、ベルト交換はメーカー対応となり高額な費用の負担があります。
時計修理の千年堂でのこのようなクラスプ修理は、ロー付け(溶接)されている部分が外れた為、再度ロー付けでの再接着での対応となります。今回のケースは18,500円で案内されています。
【オメガ】バックルのスライドネジ外れ
オメガのスピードマスターやシーマスターの時計で、ベルトのバックル(クラスプ)のスライド部に小さなネジがありますが、このネジの欠損は比較的良く見られる不具合です。
時計の脱着の際にベルトが分離しない様に、このネジにベルトをつなぎ止める役割がありますが、脱着の際に大きな負荷がかかる為、ネジが劣化・摩耗して外れてしまう事が多いようです。
修理対応としては新しいネジの取り付けと、ネジがまた外れにくいように、ゆるみ止め剤の塗布が行なわれます。但し、純正ネジの在庫がない場合は社外品のネジでの対応となります。
【時計修理の千年堂】最も多い故障はリューズ関係
時計修理の千年堂で最も多くの外装パーツの不具合はリューズに関する修理となっています。リューズが巻芯(リューズの軸)ごと抜けてしまうケースも少なくありません。
リューズが抜けてしまう主な原因は、リューズが抜けないよう巻芯を押さえている「オシドリ」という部品が摩耗していたり、「オシドリ」を留めているネジが緩んだり折れていたりする場合です。巻芯そのものが折れてしまっていることや「裏押さえ」という部品の摩耗の場合もあります。
このようなオシドリネジの緩みの場合は、ネジの締め直しやネジ交換を行ないます。また、オシドリや裏押さえの摩耗の場合は、それぞれの部品交換を行ないます。
リューズのトラブルで比較的多いのが、巻芯が折れてリューズが脱落するトラブルです。このトラブルはダイバーズモデルのねじ込み式リューズで良く見られる不具合です。
このような場合は、巻芯が折れている場合は巻芯の交換を行なわれます。または、巻芯の折れ具合によってはリューズの交換が伴うこともあります。
リューズが抜けたままで長期間、放置すると時計内部に湿気が入りやすくなり、ムーブメントのサビの発生を誘発して腐食の原因を作りかねませんので、特にリューズのトラブルには気をつけた方が良いでしょう。
ねじ込み式リューズ操作の注意点
● リューズを押しながら1/4回転程、ねじ込み方向とは逆に回した後にねじ込む
● ねじ込みの回転が1回転を下回ったら交換時期
ねじ込み式リューズは消耗品です。しかし、普段のちょっとした操作で寿命を伸ばすことができます。ねじ込み式リューズ摩耗の大きな原因は、ねじ込みの際や、ねじ込み解除の度にリューズのネジ山とチューブ(本体側のネジ山)が徐々に摩耗していくことにあります。
実はリューズとチューブのネジ溝が噛み合わないまま押し込まれてしまっている場合が少なくないのです。なので、リューズをねじ込むときはリューズを押しながら1/4回転程、ねじ込み方向とは逆に回した後にねじ込むようにしましょう。
そうすることで、リューズとチューブのネジ溝を合わせることができます。これをやらずにねじ込むとネジ溝が噛み合わないまま押し込まれてしまい、リューズのネジ山の摩耗を早めてしまう結果となりますので注意しましょう。
そして、リューズのネジ山とチューブ(本体側のネジ山)の摩耗が進行するとリューズをねじ込み難くなりますので、ねじ込みの回転が1回転を下回ったらリューズの交換時期だと思ってください。
【番外編】針と文字盤の夜光劣化
● 針の交換
● 夜光塗料の塗り直し(夜光再生)
● 夜光の補強
時計修理の千年堂では、針や文字盤の修復の依頼を受けることもあります。その際には上記3つの方法がとられることになります。まずは、その不具合箇所の部品交換が最良の選択となりますが、そもそも針や文字盤の流通が少なく入手が困難です。
なので、針や文字盤交換はメーカー送りを案内される場合がほとんどとなりますが、部品交換以外の修復を希望される方が少なくありません。なので、時計修理の千年堂では夜光塗料の塗り直し、または夜光の補強といった修復が行われます。
夜光塗料の塗り直しは一部の針のみに行えるものですが、劣化した針の夜光を落として新たに夜光塗料を塗り直すことで、夜光を綺麗にすることができます。その反面、これまでの夜光の色と若干変わったり、文字盤の夜光の色とのバランスが変わってしまうこともあります。
次に、夜光再生が行えない場合は夜光の補強を行なうことになります。この夜光の補強は針の裏面から補強剤を塗布することで、夜光のヒビや穴の悪化を抑えることができます。しかし、補強に過ぎないために、すでにあるヒビや穴と夜光の変色はそのままになります。
文字盤の夜光の修復も針と同様に文字盤交換が最善ですが、文字盤もほぼ流通しておらず入手が困難となります。なので、こちらもやはりメーカー送りが案内される場合がほとんどです。
また、修復方法としても文字盤の夜光の塗り直しは部分的には難しいことから、文字盤再生(リダン)が可能な一部の時計に限られてしまいますので確認が必要となるでしょう。
針や文字盤の経年劣化は、そのほとんどが古い時計に見られる症状の場合がほとんどです。ですが、IWCを除くほとんどのメーカーでは30年程度経過したモデルのメンテナンスはそもそも受付てはもらえません。また、針や文字盤の交換は高額な請求が行われます。
しかし、針や文字盤の夜光は経年により劣化し修復も難しいものになっても、夜光再生や補強を行うことで末永くお使いいただくことが可能になります。メーカー対応以外の修復を希望される場合は、時計修理の千年堂の修復を検討してみても良いかもしれません。
* 文字盤や針の修復を行なった個体は、その後のメーカー依頼でのメンテナンスの受付が不可となることが多いですので、メーカーでの部品交換を望まない場合であっても、夜光再生等を行う場合は熟考されることをおすすめします。
まとめ:時計修理の千年堂はオーバーホールだけではない
今回は時計修理の千年堂でのオーバーホール以外の外装パーツの修理・修復についてお伝えしてみました。時計修理の千年堂はオーバーホール専門店として認識されていますが、オーバーホール以外の依頼も年間多くの引き受けを行なっています。ですが、時計修理の千年堂ではリピーターの方を除いて、外装パーツのみの修理の受付は行なっていません。
今回ご紹介した外装パーツの故障や不具合は、オーバーホール時期とは関係なく起きてしまうこともありますが、そういった場合の1つの参考としてこちらのページを活用していただければと思います。
この記事へのコメントはありません。